VBB(Value Based Bidding)とは?価値に応じた入札戦略の3つのパターンを紹介!
デジマトレンド公開日:2024年8月20日 更新日:2024年9月12日
運用型広告黎明期では、アカウント内のキャンペーン・広告グループ・キーワードを細分化し、きめ細かい運用調整をおこなうことが日本においては一般的でした。
現代では、機械学習・AIの発達により、自動入札を使った運用が一般的になり、以前とは打って変わってキャンペーン・広告グループはコンパクトにまとめるのが運用型広告を成功させる正攻法となりました。
そして2021年頃、GoogleはVBB(Value Based Bidding)という新しい入札戦略の考え方を提唱しました。
今回はそのVBBの概要と、VBBの3パターンの実践方法を紹介します。
目次
VBB(Value Based Bidding)とは
VBBの概要
VBBはValue Based Biddingの略で、直訳すると「価値に応じた入札」という意味です。
「それって、コンバージョン値の最大化や目標広告費用対効果(tROAS)と何が違うの?」と思う人も多いのではないでしょうか。
コンバージョン値の最大化や目標広告費用対効果(tROAS)はGoogleの入札戦略の名称であり、VBBはこれらの入札戦略を使うための考え方です。
これまでコンバージョン値に対する入札戦略は、小売や旅行などオンライン決済ができるサービスにおいて導入されることが一般的でした。
Googleが提唱したVBBは、オンライン決済ができるサービスだけでなく、幅広いサービスにこれらの入札戦略を適用するというものです。
VBBを実践するメリット
ではなぜGoogleはこのような概念・考え方を提唱し始めたのでしょうか。
それは広告主の広告費用対効果の最大化(ひいてはGoogle広告の売上増加)につながるためです。
例えば美容室の予約をコンバージョンとして広告運用を実施していた場合、これまでは「1予約あたりの価値」を元に目標のCPAを決定することが一般的でした。
一方でVBBの考え方では、「1予約あたりの価値」をユーザーの属性やコンバージョンの内容に応じて変動させます。
具体的には、美容室において女性の方が売上や利益が高く、男性のほうが売上や利益が低いとします。
この時、これまでの主流であった入札戦略であるコンバージョン数の最大化や、目標コンバージョン単価の場合、男性・女性関係なくコンバージョンしやすいユーザーに対して最適化がかかります。
噛み砕くと、そのユーザーが最終的にもたらす価値と関係なく最適化がかかってしまう、ということです。
つまりこの場合、女性の方はもっと広告投資の余地があった(過少投資)状態であり、男性の方は必要以上に広告投資をした(過大投資)状態であったといえます。
VBBの考え方を導入するメリットは、この過少投資・過大投資を是正できることです。
男性・女性それぞれの価値を定義した上で、それをコンバージョン値に反映し、コンバージョン値の最大化・目標広告費用対効果を導入することで、それぞれのユーザーの価値に応じた広告運用を実現することができます。
この例ではユーザーの属性を元に「最終的にもたらす価値」を定義しましたが、価値の定義方法は他にもあるので、詳細は後ほど解説します。
VBBの注意点
このようにVBBは、広告の投資対効果を改善するため合理的な考え方のように見えます。
しかし、実施する前に注意しなければならないことがあることも念頭に置いておきましょう。
それは学習に必要なコンバージョン数です。
Google広告の公式ヘルプ「スマート自動入札について」には以下のような記述があります。
このことは目標広告費用対効果(tROAS)の方が、他の入札戦略に比べて最適化に必要なコンバージョン数が多いことを意味しています。
そのため、1ヶ月あたりのコンバージョン数が50件に満たない場合、VBBの考え方を取り入れても上手くいかないケースがあります。
VBBの3つのパターンを紹介
「1コンバージョンあたりの価値をユーザーの属性やコンバージョンの内容に応じて変動させる」と先述しましたが、VBBのパターンはこれだけではありません。
VBBには大きく分けて3つのパターンがあります。
- 直結型
- 予測型
- 後付型
それぞれの違いや導入方法について詳しく見ていきましょう。
直結型
直結型は、従来のコンバージョン値の最大化や目標広告費用対効果(tROAS)と同じです。
つまりオンライン決済が発生するサービスに適用するタイプのVBBです。
オンライン決済が発生するサービスは以下のようなものがあります。
- 小売(ECサイト)
- OTA(オンライン旅行代理店)
- チケット購入
導入方法も非常にシンプルで、コンバージョンページに購入価格をデータレイヤーなどで仕込んでおくことで、コンバージョン値を動的にコンバージョンタグに挿入します。
オンライン決済が発生するサービスは、コンバージョン数が十分であれば例外なくVBBの対象となります。
また旅行など「購入後のキャンセル」があるような商材においては、次に紹介する「予測型」への切り替えも考慮してもいいかもしれません。
予測型
予測型は、先述の例のようにコンバージョンしたユーザーの属性やコンバージョン時のフォーム内容を元に、最終的な価値を予測するものです。
予測をするためのデータの切り口として、以下のようなものが挙げられます。
- 年齢 / 性別
- 地域
- フォームの内容
先述の例のように、美容室の予約がコンバージョンであれば年齢や性別、または予約フォーム上の要望(カットのみ、カラー・パーマをかけたいなど)に沿って価値の予測ができるでしょう。
また他のサービスにおいても同様に、地域別の傾向などを元に価値を変動させる等の工夫ができると思います。
「予測型」と称しましたが、決して高度な予測モデルを構築する必要はありません。
まずは過去の傾向を元に、価値を割り振るというやり方から始めるとよいでしょう。
例えば男性は◯◯円、女性は△△円というシンプルなもので問題ありません。
その次のステップとして、価値の割り振りを複雑化していきます。
例えば東京で、この選択肢にチェックを入れている人は◯◯円、千葉でこの選択肢にチェックを入れていない人は△△円、という具合です。
最終的には取得できうる変数を元に、重回帰式やより高度な予測モデルを用いることで精度高く価値を予測できるかもしれません。
またGoogle広告には、「コンバージョン値のルール」という機能があります。
コンバージョンの値のルールを使えば、コンバージョンタグを直接イジらずとも、管理画面上でデバイスや地域、オーディエンス情報を元に値を割り振ることができます。
後付型
後付型は、コンバージョンしたユーザーが進んだプロセスに応じて価値を後付けしていくというものです。
例えばコンバージョン地点である「お問い合わせ完了」後に、商談・契約があり、契約時に10万円の価値が創出されるとします。
これまでの広告運用の場合、お問い合わせ → 契約率を逆算し、目標CPAを算出することが一般的でした。
後付型では、それぞれのプロセスにおける平均的な通過率(商談率や契約率など)を元に、各プロセスごとの価値を算出します。
そして、起点となったコンバージョンに対し、プロセスの進捗状況に応じて価値を後付けしていきます。
この価値の後付けは、その後のプロセスがオンライン上で行われる広告タグによって制御できるコンバージョンか、そうではないかによって2つの方法に分岐します。
広告タグによって制御できるコンバージョン、「無料登録」「◯日間トライアル」「有料登録」というようなプロセスを踏む場合は、シンプルに地点ごとにコンバージョンを複製すればよいです。
一方で広告タグで制御できないコンバージョン、「商談」「見積もり」「契約」などは、オフラインコンバージョンのインポートをする必要があります。
オフラインコンバージョンのインポートは、gclidやyclidを取得し、プロセスのステータス管理ができるCRMツールに格納する必要があるため、技術的なハードルが高い方法です。
後付型はVBBの中で最も難解な手法であるため、チャレンジする際は技術的な体制や正しい価値反映のロジック等を入念に準備する必要があります。
VBBを成功させるためのポイント
VBBは非常に合理的な入札戦略の考え方ではありますが、VBBを実践したからといって必ずしも広告費用対効果が改善するとは限りません。
次にVBBを成功させるためのポイントを3つ紹介します。
1ヶ月あたりのコンバージョン数は50件以上必要
先述の通り、目標広告費用対効果(tROAS)の最適化が上手く働くためには、1ヶ月あたりのコンバージョン数が50件以上必要です。
そのためVBBの検討をする前に、Google広告のみ、またはYahoo・Microsoft広告のみでこのしきい値を超えているかを確認しましょう。
さらに言えば、入札戦略の変更は一時的なパフォーマンス悪化につながります。
そのことを考慮して、1ヶ月あたりのコンバージョン数は60件以上あった方が成功する確率は高くなると思います。
言ってしまえばコンバージョン数はあればあるほどよいのですが、最低限のラインとして「1ヶ月あたり50件程度」を念頭に置いておきましょう。
定期的な価値の見直し体制
予測型・後付型における価値の算出は、過去の実績をベースにおこないます。
そのため、価値を算出するための集計期間によって、その値も変動します。
価値の算出期間を過去半年にするのか、過去1年にするのか、過去3年にするのかの議論も重要ですが、もう一つの重要なポイントとして価値の可変性が挙げられます。
価値の算出方法を変更したい時に、都度エンジニアに依頼が必要であったり、上司の承認が必要であったり、計算をするために経営企画にデータを出して貰う必要があったりすると、施策のスピード感が損なわれてしまいます。
VBBの導入は様々な部署の方を巻き込む必要がある取り組みであるため、部署間連携の交通整備もしておいて損はありません。
「1度価値を決めたら一生変えられない」というのは、VBBに暗雲立ち込めた時に対処のしようがなくなってしまいます。
広告担当者もある程度、各広告媒体の使い方や、GTMの使い方を学んでおくとよいでしょう。
検証設計の構築と合意
「定期的な価値の見直し体制」と共通する部分もありますが、検証設計の構築もVBBを成功させるためには重要な要素の1つです。
VBBは、オンライン上のコンバージョンの増減だけで評価できるものではありません。
オンライン上のコンバージョンは減ったけど、ビジネス全体の成果は上がるということも起こりかねない取り組みです。
そのため、以下のポイントを踏まえて検証設計を構築しましょう。
- VBBの検証期間と評価期間
- どのように検証をするのか
- どの指標が改善したら成功といえるのか
VBBを実施した時、起こり得る結果は「何も変化がなかった」を除くと下図の4パターンになります。
コンバージョン数が増え、コンバージョン値(もしくは実際の価値)も増えた場合、理想的な広告運用が実現できたといえます。
一方、コンバージョン数が減り、コンバージョン値が減った場合、これは元の入札戦略に戻したほうがいいかもしれません。
問題は「数は増え、価値が減る」もしくは「数は減り、価値が増える」というパターンです。
このどちらを良しとするかは、ビジネスの状況によって異なるため、マーケティングの部署だけでは意思決定ができない可能性もあります。
そのためVBBを実施する際は、必要に応じてマーケティングの部署だけでなく、関係各所に合意をとっておくと良いと思います。
VBBのまとめ
VBB(Value Based Bidding)は、広告運用においてユーザーやコンバージョンの属性に基づいて価値を変動させ、広告投資の最適化を図る入札戦略の考え方です。
従来は全てのコンバージョンを同一の価値として扱っていましたが、VBBではその価値を動的に変えることで、過少投資や過大投資を是正し、より効果的な広告運用を実現することができます。
またVBBにおける価値の算出には「直結型」「予測型」「後付型」の3つのパターンがあり、業界やサービスなどによって、どの方法で実践するかをまず策定する必要があります。
そしてVBBは、広告上のコンバージョンが増減する施策ではなく、ビジネスにおける成果の増減に寄与する施策であるため、様々な部署との連携が必要不可欠です。
このことを踏まえ、ぜひGoogleが提唱する新しい入札戦略の考え方であるVBBを、広告運用に取り入れてみてください。