パルス消費とは?新しい消費時代にマーケティング担当者が取るべき対応とは?
デジマトレンド公開日:2024年8月29日 更新日:2024年8月29日
「スマホを見ていたら、ついつい商品を買ってしまった」という経験はありませんか?
実はこれは2019年にGoogleが発表した、パルス消費と呼ばれる新しい消費行動の1つです。
SNSやデジタルプラットフォームの普及により、消費者が瞬時に購入を決断するパルス消費は、マーケティング担当者にとって無視できないものとなりました。
つまり現代のマーケティングにおいては、このような急速な変化に対応し、消費者のニーズを的確に捉えることが重要なのです。
今回はパルス消費とは何か、その背景や増加要因を詳しく解説し、マーケティング担当者が今すぐ取り組むべきアクションについて解説をします。
目次
パルス消費とは?
パルス消費の概要
パルス消費とは、消費者が瞬間的に衝動的な購入を行うことを指します。平たく言えば「衝動買い」のことです。
従来の消費行動とは異なり、特定の刺激、例えば、SNSでの広告や友人からのおすすめなどにより瞬時に購買決定がなされます。
近年のデジタルプラットフォームの発展により、パルス消費は急速に拡大しており、マーケティングの新たなトレンドとして注目されています。
先述の通り、この新しい消費スタイルに対応したマーケティング戦略を考えなければいけません。
従来の消費行動と何が違うのか
改めて、パルス消費(衝動買い)はこれまでの消費行動と何が違うのかについて、もう少し深掘りをします。
これまでの消費行動はAIDMAなど、一気通貫したマーケティングフレームワークに落とし込めると考えられていました。
AIDMAとは、ユーザーがアクションまでに経るプロセスの頭文字をとっています。
- Attention(注目)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
AIDMAでは、まず商品やサービスに「注目」し、興味や欲求、記憶などのプロセスを経て行動に移すと考えられています。
他にも様々なマーケティングフレームワークがありますが、使われる言葉は違えど、ユーザーはこのような行動に類似したプロセスを経て、購買行動につながっていると考えられてきました。
そのため、従来のマーケティング戦略はこのようなフレームワークをベースとして、注目・認知を得るための施策、行動を起こさせるための施策など、それぞれの行動プロセスごとに施策が分断されているという特徴があります。
一方でパスル消費の考え方では、このAIDMAにおいて、特に興味や記憶のプロセスが短縮されるか、消失することが多いのです。
具体的にはSNSで目にした広告や、インフルエンサーのおすすめを見た瞬間、消費者はその場で「欲しい」と感じ、そのまま購入の決断をします。
この瞬発的な購買行動は、現代の情報過多な環境と、消費者の情報処理能力の変化が反映されていると考えられています。
以下に、従来の消費行動とパスル消費の違いについてまとめました。
- 計画性の欠如: パルス消費は感情に基づく即時の購買行動で、計画的なリサーチや比較が行われない。
- デジタル依存: SNSやターゲティング広告がパルス消費の主要なドライバーとなっており、オンラインでの影響が大きい。
- 購買決定のスピード: パルス消費では、瞬間的に購買決定が行われ、購入プロセスが非常に短縮される。
- 外部刺激の影響: パルス消費は広告や友人の推薦など、外部からの強い刺激によって引き起こされることが多い。
パルス消費が増えている理由
パルス消費が急増している理由は、大きく3つ挙げられます。
- モバイルデバイスの普及
- SNSやデジタル広告の進化
- 決済と配送サービスの改善
いずれの理由も、皆さんは強く実感しているものではないでしょうか。
1つめの「モバイルデバイスの普及」に関して、NTTドコモ モバイル社会研究所の調査結果によると、2024年のスマートフォン普及率は97%となり、単純計算すると、ほぼ1人1台持っている計算になります。
またYoutuberやインフルエンサーという言葉が一般化したということだけでなく、SNSへの個人関連情報の入力により、デジタル広告のターゲティング精度が向上していることもパルス消費の促進につながっています。
そして便利な決済手段と即時配送サービスの登場により、消費者は簡単に、そしてすぐに購入することが可能となりました。
物流の2024年問題で即時配送サービスは脅かされている状況ですが、このような問題が取り沙汰されているのも、ECサイトの成長による物流ニーズの高まりが背景にあるためです。
Store Leadsの調査によると、世界中で用いられているEC構築サービス「Shopify」の日本国内での導入率は2019年から2024年にかけて約16倍になっています。
このようなデジタル社会化が、パルス消費を促進されている理由です。
パルス消費の6つのセンサー
パルス消費の理解をさらに深めるためには、消費者が購買行動を取る際に反応する「6つのセンサー」も理解する必要があります。
マーケティング戦略を考える前に、これらのセンサーを意識することで、より効果的な施策の立案につなげることができます。
セーフティ
セーフティセンサーは、消費者がより安心・安全なものに反応する心理を表しています。
消費者は自分や家族、友人の健康や安全を優先するため、安心・安全な商品やサービスを魅力的だと考えます。
たとえば、食品や化粧品、医薬品の購入時には、特にこのセーフティのセンサーが重要視されます。
フォーミー
フォーミーセンサーは、消費者がより自分にぴったりだと思うものに反応する心理を表しています。
たとえば「乾燥肌」や「アレルギー」など、消費者一人ひとりが抱える様々な悩みに対して、最適な商品やサービスを訴求することができれば、それは消費者にとって「自分にぴったり」と感じることができるかもしれません。
フォーミーセンサーを効果的に活用するためには、消費者個人の状態や情報を収集することが重要です。
コストセーブ
コストセーブセンサーは、消費者がお得なものに反応する心理を表しています。
価格に敏感な消費者は、コストパフォーマンスが良い商品を選びやすく、同じ品質のものであれば価格が安い方を選ぶ傾向があります。
消費者は、割引やセール情報、クーポンなどに特に強く反応し、それによってパルス消費を起こしやすくなります。
たとえば、送料無料や期間限定の割引がこのセンサーを刺激し、消費者に「今すぐ買わなければ」と感じさせることができるのではないでしょうか。
フォロー
フォローセンサーは、消費者が売れているものや第三者が推奨するものに反応する心理を表しています。
さらに踏み込むと消費者は他者の意見や行動を参考にすることで、自分の選択に安心感を得ようとしているのです。
特に、口コミやレビューが多い商品、高評価を得ている商品に対して、このセンサーが強く働きます。
従来は「食べログ」を筆頭としたグルメレビューサイトが飲食店選びに使われていましたが、今日では公平・公正なレビューが見れるGoogle Mapや、Instagramの写真を見て飲食店選びをする人が増えてきました。
このような消費者が増えたことは、フォローセンサーが以前よりも敏感になったためだと言えるのではないでしょうか。
アドベンチャー
アドベンチャーセンサーは、消費者が新しいものや興味をそそるものに反応する心理を表しています。
消費者は新しい体験や未知のもの、使ったことのない商品やサービス対して好奇心を抱きます。
具体的には、新商品や限定品、トレンド商品に対して、このセンサーが働きます。
私の場合、最新のガジェットに強い興味を持ち、試してみたくなる気持ちが絶えずあります。(ちょっと前だとスマートリングなど)
このように、消費者の冒険心を刺激することが、パルス消費を引き起こすカギとなります。
パワーセーブ
パワーセーブセンサーは、消費者が買い物の労力を減らせることに反応する心理を表しています。
現代の消費者は、できるだけ手間をかけずに簡単に商品を購入できることを重要視しています。
このセンサーが働くと、消費者は時間や労力を節約できる選択肢を優先します。
たとえば、オンラインショッピングでのワンクリック購入や、定期購入サービスの利用などがこのセンサーの刺激につながります。
このセンサーを刺激させるためには、企業側は決済サービス、配送サービス、UI/UXの改善をおこなう必要があるといえます。
パルス消費に対応するためのマーケティング手法
パルス消費に対応するためには、消費者の瞬間的な購買行動を捉えるための多角的なマーケティング戦略が必要になります。
これには、消費者がどのタイミングで行動を起こしても対応できるように、企業が様々な接点で消費者とつながる「フルファネルマーケティング」
SNSやLINE公式アカウントなどを活用し、消費者と深い関係を築く「コミュニティマーケティング」
そしてインフルエンサーを活用して消費者の信頼を得る「インフルエンサーマーケティング」が含まれます。
これらの手法を統合的に活用することで、パルス消費に対応することができます。
フルファネルマーケティング
フルファネルマーケティングは、消費者が購買行動を起こすまでの全ての段階をカバーするマーケティング手法です。
パルス消費では、消費者が突然の衝動で商品を購入するため、企業はどの段階でも適切な接点を持ち続けることが重要です。
従来はリスティング広告や、Doクエリを狙ったSEO対策だけでユーザーの獲得ができていたかもしれませんが、パルス消費に対応するためにはそれだけでなくYoutubeやTVCMを使った認知の獲得、SEOでの対策キーワードの幅を広げることも検討しなければなりません。
Googleが新しい広告メニューとしてP-MAXを提供しはじめたのも、このパルス消費への対応だと思われます。
コミュニティマーケティング
コミュニティマーケティングは、SNSやその他のデジタルプラットフォームを活用して、企業と消費者が深い関係を築くものです。
具体的には、SNSマーケティングを通じて、日常的に消費者と対話しながら、パルス消費の機械を逸しないことを目的とします。
さらに、LINE公式アカウントなどを利用したCRM施策により、パーソナライズされたメッセージを送信し、特定の消費者に向けたキャンペーンの実施やクーポンを配布することもパルス消費の促進につながります。
そしてSNSやLINEだけでなく、Google Mapにおける対策(MEO)も重要です。
口コミやレビューを集めることで消費者の信頼を得ながら、瞬間的な衝動が発生した時に、選択肢の一つに入るということを常時心がける必要があります。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングは、強い影響力を持つインフルエンサーを活用して、ブランドや製品・サービスをプロモーションする手法です。
パルス消費の増加に伴い、企業の直接的な情報発信よりも、インフルエンサーを通じて伝えられる情報の方が消費者により強く響くケースが増えています。
インフルエンサーが発信するコンテンツは、消費者にとって信頼性が高く、かつリアルタイムで受け取れるため、パルス消費を引き起こしやすいといえます。
さらに、インフルエンサーが体験した製品のレビューや日常的な使用シーンを共有することで、また別の消費者の購買意欲を高め、連鎖的なパルス消費を実現することができるかもしれません
まとめ
パルス消費とは、スマートフォンやSNSの普及によって生まれた、新しい消費行動の一つです。
瞬間的に商品を見て「欲しい」と感じ、即座に購買行動に移るパルス消費は、従来のAIDMAを代表とする消費行動とは異なる特徴を持つため、企業は新しいマーケティング戦略を構築・実行する必要があります。
今回紹介した「フルファネルマーケティング」「コミュニティマーケティング」「インフルエンサーマーケティング」はあくまで手法の一例であり、今後もこのパルス消費のための新しいマーケティング手法が出てくるかもしれません。
パルス消費はデジタル化社会がもたらした現象であり、情報伝達の高速化がもたらした一つの結果であるため、企業のマーケティングの変革も、このスピードについていく必要があります。
ぜひこの記事を参考に、自社のマーケティングを見つめ直してみてください。