バタフライサーキットとは?8つの動機と効果的なマーケティング方法
デジマトレンド公開日:2024年8月30日 更新日:2024年8月30日
スマートフォン、SNSの普及や2020年頃から全世界を襲った新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、これまでの消費行動は大きな変革を迎えました。
その変革を象徴する新しい情報探索行動を、2020年にGoogleは「バタフライサーキット」と名付けました。
今回はそのバタフライサーキットの概要に触れつつ、新しい情報探索行動に適応するために、どのようなことを考えなければいけないのかについて解説します。
目次
バタフライサーキットとは?
バタフライサーキットとは、消費者が情報を探索する際に「さぐる」行動と「かためる」行動を繰り返すことです。
その「さぐる」「かためる」を右往左往する様子が「蝶(バタフライ)」のようだったので、バタフライサーキットと名付けたそうです。
バタフライサーキットは後述する新しい購買行動であるパルス消費につながる情報探索行動とされており、このパルス消費を捉えたマーケティングを実行するためには、必然的にバタフライサーキットの理解も必要になります。
バタフライサーキットの誕生背景
バタフライサーキットの概念は、消費者の購買行動がインターネットの普及と共に変化したことから生まれました。
かつての購買行動は、代表的なマーケティングモデルであるAIDMAや AISASなどでも表現されている通り、認知から購入まで直線的に進むものでした。
しかしながら、冒頭の説明の通り、スマートフォンやSNSの普及、コロナ禍という新しい生活様式、他にも決済サービスや配送サービスの効率化やYoutuber・インフルエンサーの台頭など様々な時代背景があり、消費行動は変革を迎えました。
そしてその消費行動の以前の段階である探索行動においても、同じように大きな変化を迎えたのです。
バタフライサーキットと従来の情報探索行動の違い
繰り返しになりますが従来の情報探索行動は、AIDMAやAISASといったマーケティングモデルで表現されていました。
AIDMAはAttention、Interest、Desire、Memory、Actionの頭文字をとったもので、AISASは(Attention、Interest、Search、Action、Share)の頭文字をとったものです。
AISASは比較的歴史が浅く、2004年に電通が提唱したもので、従来のAIDMAとは違いインターネットの普及による「Search(検索する)」という行動や、他のユーザーとの「Share(共有する)」という行動が生まれるようになったとしています。
いずれのマーケティングモデルも、Attention(認知)からAction(行動)まで一貫したものだと考えられていました。
しかし、バタフライサーキットはこれらの従来のモデルとは異なり、非直線的な情報探索行動を示します。
消費者は一度選択肢を固めたとしても、再び情報を探索し、選択肢を広げることがあるということです。
例えば、購入を決定する前に、消費者が新たな情報に触れたり、他の選択肢を再評価するために検索を繰り返すことがあり、最終的な意思決定が遅れることもあります。
このような循環的で反復的なプロセスは、消費者の意思決定が単純な一方向の流れではなく、複数の選択肢を行き来しながら徐々に絞り込まれることを意味しています。。
AIDMAやAISASのような直線的なモデルでは捉えきれない複雑な行動を、バタフライサーキットでは説明しているのです。
パルス消費との違い
バタフライサーキットとパルス消費は密接な関係があります。
先述の通りバタフライサーキットは、パルス消費が起こる前の情報探索行動であり、パルス消費は平たく言えば「衝動買い」のことです。
ただパルス消費は単なる衝動買いをカッコよく言ってるだけではなく、この衝動買いの背景や行動の特徴を定義したものです。
つまりこれまで「衝動買い」はAIDMAやAISASなどのフレームワークを使って体系的に説明ができなかったものでしたが、このバタフライサーキットとパルス消費の概念を用いて「衝動買い」を説明できるようになったということです。
パルス消費については以下の記事でも紹介しているので、ぜひ一緒に読んでみてください。
バタフライサーキットの8つの動機とは?
バタフライサーキットにおける消費者の情報探索行動は、単なるランダムな行動ではなく、明確な動機に基づいています。
Googleの調査によれば、この動機は大きく8つに分類され、それぞれが消費者の購買意思決定に重要な役割を果たしています。
4つの「さぐる」行動
バタフライサーキットの「さぐる」行動は以下の4つに分類されるとしています。
- 気晴らしさせて
- 学ばせて
- みんなの教えて
- にんまりさせて
「気晴らしさせて」は、日常の中で気軽に情報を調べ、楽しみや新しい発見を求める行動のことです。
これは、スマートフォンで何気なく情報を検索する際に、興味を引かれる商品やサービスに出会うといった状況に当てはまります。
「学ばせて」は、特定のテーマや興味を深めるために、消費者が積極的に情報を収集する行動のことです。
例えば、新しい趣味や興味が生まれた際に、それに関連する知識や製品、サービスを徹底的に調べるケースがこれに当てはまります。
「みんなの教えて」は、他者の意見やレビューを参考にして、自分の選択肢を検討するものです。
商品を購入する前にSNSやレビューサイトで他者の口コミやレビューなどを確認する際の行動のことです。
「ニンマリさせて」は知る人ぞ知る情報や、自分だけが見つけたお得な情報に出会うことを目的とした行動です。
この動機は、他の人が知らないような裏技やテクニック、隠れた名品、名所を見つけることに喜びを感じる消費者心理を反映しています。
4つの「かためる」行動
バタフライサーキットの「かためる」行動は以下の4つに分類されるとしています。
- 納得させて
- 解決させて
- 心づもりさせて
- 答え合わせさせて
「納得させて」は、購入を決断する前に、選択を確実なものにするためにさらに情報を集める行動のことです。
消費者は、価格や品質、口コミなどを徹底的に確認し、自分の選択が最良であると納得できるまで情報を探します。
「解決させて」は、購入にあたっての不安や疑問を解消するための行動です。
例えば、「この商品は自分の期待に応えてくれるだろうか?」という疑問に答えるために、追加の情報を探す行動です。。
「心づもりさせて」は、後でがっかりしないように、あらかじめ期待値を下げておくための行動です。
消費者は、購入後の失望を避けるために、商品の欠点やデメリットを意識的に探しておき、現実的な期待を持つようにします。
「答え合わせさせて」は購入の直前に、最終確認として情報を再チェックする行動です。
最後の一押しとして、もう一度口コミやスペックを確認し、選択が正しいかどうかを最終的に確かめます。
この段階では、既に選択はほぼ決まっているものの、最終確認を行うことで、購入の決断をより確かなものにします。
8つの動機が購買行動に与える影響
バタフライサーキットにおけるこの8つの動機は、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。
例えば、「さぐる」段階の動機が強い消費者は、まだ購入を決断していないため、多様な選択肢を比較検討している状態だといえます。
逆に「かためる」段階に入った消費者は、すでに購入の意思が固まっているため、細かな仕様や価格、口コミ・レビューなど、具体的な情報に注目します。
このように、動機の違いによって情報の求め方や意思決定のプロセスが異なるため、マーケティング戦略もこれらの動機に応じて柔軟に対応することが求められているといえます。
企業はこの8つの動機を理解した上で、消費者がどの段階にいるのかを見極め、それに合わせた情報提供を行う必要があると言えるのではないでしょうか。
フルファネルマーケティングの重要性
バタフライサーキットやパスル消費など、消費者行動がこれまで以上に複雑化している現代において、消費者の購買プロセス全体を見据えたフルファネルマーケティングを考えなくてはなりません。
こうした背景から、Googleではフルファネルマーケティングを強化するために、DDA(Data Driven Attribution)やP-MAXの導入を推奨しています。
また他にも企業のSNSの活用、インフルエンサーマーケティングなども、このような新しい消費行動に対応する手段の一つになり得るのはないでしょうか。
DDA(Data Driven Attribution)の導入
DDA(Data Driven Attribution)は、データに基づいて各接点の貢献度を評価する手法です。
DDAは従来のラストクリック・ラストセッションで評価をするものとは異なり、消費者がコンバージョンに至るまでのすべてのタッチポイントを考慮し、それぞれの接点がどの程度コンバージョンに寄与したかを測定するものです。
より踏み込むと、従来のラストクリック・ラストセッションの評価では、バタフライサーキットにおける「かためる」という行動しか評価をすることができません。
「美容室の予約を増やす」というマーケティング目標の場合、ラストクリック・ラストセッションでは「◯◯美容室 予約」や「◯◯美容室 口コミ」などの検索行動=かためる行動がより高く評価されます。
一方でDDAを導入することで「東京 美容室」や「おすすめ ヘアカット」などの検索行動=さぐる行動も評価することが可能になります。
つまりDDAの導入することで、消費者の複雑な購買プロセスをより正確に把握し、効果的なアプローチを行うことができるのです。
P-MAXの導入
P-MAXはGoogleが提供するフルファネルキャンペーンの1つで、複数のGoogle広告チャネルを統合して運用できる特徴があります。
P-MAXでは、Google広告の代表格であるGoogle検索、ディスプレイだけでなく、YoutubeやGoogleマップ、Gmailなど様々なチャネルに対して配信することが可能です。
つまりP-MAXは、消費者の購買プロセス全体をカバーすることが可能だということです。
実態としては「検索面への配信に寄ってる」「Youtubeに全然配信されない」などの懸念もありますが、特に広告予算が潤沢にない中小企業がバタフライサーキットやパルス消費に対応するための簡単な方法の1つであることには変わりません。
SNSやインフルエンサーの活用
バタフライサーキットやパルス消費という新しい消費者行動を生んだ要因の一つである、SNSやインフルエンサーを活用しない手はありません。
SNSやインフルエンサーは、バタフライサーキットにおける「みんなの教えて」「にんまりさせて」「納得させて」「心づもりさせて」に対して重要な役割を果たします。
消費者はSNSのフォロワーの対話や、インフルエンサーの投稿を通じて、自分だけの価値ある情報を発見することができたり、興味を持った商品に関する情報をさらに検索し、比較検討を深めることができます。
マーケターはどのような行動を取るべきか
ここまで、バタフライサーキットとフルファネルマーケティングにおける重要性について詳しく紹介しました。
最後に、私の意見を述べさせていただきます。
確かに、バタフライサーキットはGoogleによる具体的な調査に基づいた、現代の消費者行動を理解する上で有益なフレームワークだと思います。
これまでの評価手法やマーケティングアプローチが、もはや通用しなくなる可能性があることも示唆しています。
しかしバタフライサーキットは「全体を俯瞰して見たら、そのような傾向が見られる」という一つの視点であり、業界や業態によって消費者の行動の特徴は様々だと思います。
Googleが調査を行った業種においては、多くの消費者がバタフライサーキットを起こしているとされていますが、それでも約30%の消費者は従来型の消費行動をしていることも忘れてはなりません。
またフルファネルマーケティングにおいても、予算が潤沢にない中小企業が取り組むにはハードルが高いものだと思います。
その上で、私が思うマーケターが取るべき行動を端的にまとめると2つになると思います。
- 様々なマーケティング手法の理解
- 選択と集中
フルファネルマーケティングは確かに重要ですが、限られた予算の中で成果を出すためには選択と集中は必要不可欠です。
そしてその「選択」をするためにも、現代におけるマーケティング手法や戦略を幅広く理解する必要があるのではないでしょうか。
つまり、マーケターはこれまで通り、やるべきことをやるしかないと思います。
特にこのような新しいフレームワークは手段と目的が入れ替わりがちです。
あくまでバタフライサーキットは新しい考え方の1つと捉え、これまで通り自社サービスに合う最適な方法(※但しその最適な方法は移り変わっていく!)を取り続けることが重要だと思います。