失敗しないリスティング広告代理店の選び方
コラム公開日:2024年9月9日 更新日:2024年9月12日
リスティング広告で成果を挙げるためには、適切な代理店選びが重要です。
その一方で「どの代理店を選べば良いのか分からない」という悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
選び方を間違えてしまうと、広告の費用対効果が悪くなったり、思わぬトラブルに繋がることもあります。
実際に私に相談があった例だと、以下のようなトラブルがありました。
- 広告媒体を増やすと追加で運用手数料が取られ、営業担当は広告媒体を増やす提案しかしてこない
- 目標CPAを全然達成していないのに、予算の増額提案しかしてこない
- 代理店を変更しようとしたら、これまでの運用アカウントの引き継ぎがおこなわれなかった
このような事態を避けるためにも、リスティング広告の代理店を選ぶ基準だけでなく、インターネット広告業界の慣習をきちんと理解しておく必要があります。
本記事では、これまで大手広告代理店で様々な業界のリスティング広告の運用を経験し、かつGoogleの日本法人で1万以上の広告アカウントを担当、そして現在ではリスティング広告含め、SEOやCRM、DXなど様々な業務支援を行っている私が、リスティング広告の代理店選びのポイントを解説していきます。
特に後半で説明する「リスティング広告代理店を選ぶ時の注意点」は、インターネット広告業界の悪い慣習に踏み込んで解説をしているので、ぜひ参考にしてみてください。
「大手広告代理店であれば良い」とは言えない理由
リスティング広告の代理店の選定基準の1つとして、「大手か大手ではないか」が挙げられます。
これはリスティング広告に限らず、様々な業界でも適用できる基準であるため、それこそ初めてリスティング広告代理店を選ぶ場合は、この基準を参考にしてしまいがちです。
「大手か大手ではないか」も重要な基準の1つではありますが、必ずしも大手だからといって満足ができる結果が得られるわけではありません。
また大手代理店の場合、最低出稿金額を非常に高く設定しているケースもあり、門前払いを食らうケースがあります。
ではなぜ「大手であれば良い」とは言い切れないのか、詳しく説明していきます。
ベテランの方がアサインされるとは限らない
大手代理店には運用経験豊富なベテランがたくさんいて、そんな方が自社のリスティング広告を担当してくれると思ってしまいますよね。
しかし、実際にはそうとは限りません。
確かに大手代理店には運用経験豊富な方が多数在籍していることは事実ですが、大手だからこそ運用経験が浅い新人も多く在籍しています。
これまで最大手のサイバーエージェントや、電通デジタル、博報堂グループのアイレップなど、様々な代理店の組織構造を見てきましたが、基本的には大口のクライアントに優秀な人員が配置され、そうではないクライアントには新人や、他にも多くのクライアントを抱えてリソースが逼迫しているベテランが配置されることが多いです。
それは、私が在籍していたGMO NIKKOも例外ではありません。
そのため、大手に頼むとかえって運用がうまくいかず、広告のパフォーマンスが低下する可能性もあります。
特に細かい調整や新しい施策の導入が必要な場合、経験不足が問題になることもあるため、担当者の経験やスキルを確認することが重要です。
つまり、リスティング広告の依頼先が実績のある代理店だったとしても、担当者が同じように成果を出せるかどうかは別の話ということです。
とはいえ、大手には大手の良さもあるため、次に大手に頼むメリットと、小さい代理店に頼むメリットをそれぞれ紹介します。
大手リスティング広告代理店を選ぶメリット
「出稿金額が少ないと、大手に頼むべきではないのか」というと、そういうわけではありません。
大手のリスティング広告代理店であれば、多くの業界経験や、インターネット広告のトレンド、最新技術に精通している点は大きな強みです。
大手代理店に頼むメリットは以下のようなものがあります。
- 豊富なリソース:クリエイティブ制作や分析などの専門チームがあるため、幅広いサポートを受けることができる
- 業界の知識:多くの業界を扱っているため、特定の業界に限らず幅広い知識を持っている
- 運用の安定性:大規模な運用や複雑なキャンペーンでも一定の品質が保たれる
また大手代理店では、運用体制に不服があれば、その体制変更も検討してくれる可能性があります。
そのため大手代理店にリスティング広告を委託する際は「いかに代理店を使い倒せるか」が重要になるといえます。
小さいリスティング広告代理店を選ぶメリット
一方で、規模の小さい代理店を選ぶことにもメリットがあります。
特に広告予算が限られているケースや、柔軟でスピーディな対応を求めている場合は小さい代理店を検討してみても良いのではないでしょうか。
- 柔軟な対応:小規模な代理店では、クライアントごとの状況に応じて柔軟な対応ができることが多い
- 強い責任感:少人数のチームで運用を行うため、担当者が深く案件に関わり、責任を持って運用を進めてくれる
- ベテランが担当してくれる可能性が高い:成長過程の代理店であれば、大手よりもベテランが担当してくれる可能性が高いといる
また小さい代理店にリスティング広告を頼むデメリットとしては、大手代理店と比べ制作体制が弱かったり、システム開発が必要なケースなどに対応ができないことがあります。
そのため、小さい代理店を探す前に、まずはリスティング広告で成果を挙げるためには、どのようなことが必要なのかを理解する必要があります。
「リスティング広告の委託が初めて」という方は、ぜひデジマナビの「リスティング広告 - 基礎編」を受講してみてください。
リスティング広告代理店を探す方法
「大手=安心ではない」ということを踏まえ、どのようにして信頼できる代理店を見つければよいでしょうか。
次にリスティング広告代理店を探す方法について紹介します。
一括比較サイトで相談をする
最近では、BOXILやPRONIなどの一括比較サイトを使って、リスティング広告代理店の候補をまとめて探すことができます。
一括サイトで探すメリットは以下のとおりです。
- 多くの代理店の情報を一度に確認、比較ができる
- 条件にあった代理店を簡単に見つけることができる
- 代理店各社の提案を受けることができる
ただ一括比較サイトを使って相見積もりを取る場合、注意をしなければならないことがあります。
それは提案時の担当と、実際の運用担当が異なる可能性があることです。
多くの代理店は、優秀な人を提案時に起用し、契約が決まったら新人を起用することがあります。
一括比較サイトを通じて相見積もりを取った場合、代理店にとって競合他社がいることは明白であるため、優秀な人を提案にアサインする可能性が非常に高いと言えるでしょう。
SNSや知人を通じて紹介してもらう
もう一つの方法として、知人やSNSを通じて紹介してもらうのも有効な手段です。
特に仲の良い知人からの紹介であれば、代理店側も無碍な対応はできないでしょう。
また近年では、リスティング広告に特化したインフルエンサーやSNS活動をしている人も多くなりました。
業界情報に関して積極的に様々な発信をしている人に相談をしてみるのも、選択肢に入れてみてください。
LINEヤフー Sales Partnerを参考にする
「大手のデメリットは分かったけど、それでも大手の安心感が必要」という場合はLINEヤフー Sales Partnerを参考にするのが良いと思います。
LINEヤフー Sales Partnerは、3つのカテゴリーに分かれており、リスティング広告であればAds Operation Badgeを保有している代理店が良いのではないでしょうか。
Ads Operation Badgeは以下のような代理店に進呈されます。
LINEヤフー Sales Partnerには他にも、Store Promotion Partnerや、Ads Policy Badgeなどのカテゴリーに分かれているので、ぜひ一度どんな代理店が所属しているのか目を通してみてください。
リスティング広告代理店を選ぶ時の基準
代理店の候補の探し方を踏まえ、次にどのような基準をもって最終決定をすれば良いのかについて紹介します。
手数料だけでなく、経験や実績、対応力など総合的に見て、自社の最適なパートナーを見つける必要があります。
その業界における運用実績
私は10年以上リスティング広告を運用してきましたので、様々な業界の広告アカウントに触れる機会がありました。
旅行、不動産、美容、健康食品、教育、人材、自動車、ゲームアプリ、リユース、金融、医療、エンタメ、EC、BtoBなどなど、、運用実績を挙げればキリがありません。
そんな私だからこそ言えることは、業界ごとの運用方法や刺さる訴求は全然違います。(もちろん、中には似ている業種もあります。旅行や不動産など)
ただアカウントの作り方や気にしないといけないことは、各業界・業種によって、本当に違うんです。
例えば美容・健康食品などは景表法などに気をつけなければいけません。医療の場合は薬機法、リユースの場合は商標の制限などがあります。
旅行や不動産はエリアごとの緻密な配信設計が必要で、自動車だと車種、ECだとMerchant Center、BtoBだとSales Forceの知識が必要だったりします。
このように各業界・業種によって、広告運用の特性が大きく異なるため、自社の業界に強い代理店を選ぶことが成功のカギとなることは明白です。
広告費に対して何%の手数料がかかるのか
リスティング広告代理店の手数料は、一般的に広告費に対する割合で決まることが多いです。
相場は20%で、低いと15%、高いと25%の代理店もあります。
この割合は代理店や、配信する広告媒体によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
例えば、GoogleやYahoo!のリスティング広告は20%だけど、Meta広告は25%というケースも少なくありません。
手数料が高い代理店は、もし運用のパフォーマンスに差分がない場合、その分CPAも高くなってしまうことを意味します。
ですが、手数料が安ければ安いほど良いとは限りません。
またデジマナビを運営している株式会社Qooxは、一律10%で運用をしている代わりに広告代理店の一般的なサービスを削っているケースもあります。
そのため手数料を確認すると同時に、どのようなサービスを受けることができるのかを確認するようにしましょう。
クリエイティブ制作費はどれくらいかかるのか
リスティング広告を改善する重要な要素の1つとしてLP(ランディングページ)があります。
もちろんアカウントの中身をPDCAしていくことも重要ですが、リンク先であるLPのPDCAも改善には欠かせない要素の1つです。
またはLPがない場合、業界・業種によっては専用のLPを用意したほうが成果が改善することもあります。
このLPの制作費を代理店に委託した場合、どの程度の費用がかかるかも確認しておくようにしましょう。
ただし、LPの制作は必ずしもリスティング広告の代理店にお願いをする必要はなく、LPの制作を専門で行っている制作会社にお願いするのも手段の1つです。
ただスムーズなコミュニケーションを実現したい場合は、取引先をコンパクトにした方が良いとは思います。
リスティング広告代理店を選ぶ時の注意点
選ぶ時の基準として「業界における運用実績」「手数料」「制作費」という切り口を紹介しましたが、実はこれだけではありません。
次に紹介する注意点は、多くの代理店が自発的に教えてくれないものです。
契約段階になってから「え、そうなの?」と気づいたり、運用をお願いして少しずつ知識がついてきた段階で気づくものもあります。
むしろこれから紹介する内容を、打ち合わせ時にしっかり伝えてくれる代理店は誠実であると言えるので、しっかりとおさえておきましょう。
手数料は内掛けか、外掛けか
リスティング広告代理店の手数料の形式には、「内掛け」と「外掛け」の2種類があります。
これを確認せずに契約すると、後々の費用面でのトラブルに繋がることがあります。
例えば手数料が20%で、広告予算が50万円の場合、内掛けの場合は以下のような計算式になります。
50万円 ÷ 1.2 = 41.7万円(広告配信費用)
50万円 - 41.7万円 = 8.3万円(代理店手数料)
一方で同じ予算、同じ手数料のときの外掛けの場合は、以下のような計算式になります。
50万円 × 0.8 = 40万円(広告配信費用)
50万円 - 40万円 = 10万円(代理店手数料)
内掛けは100%に手数料を足して割るのに対し、外掛けは100%に手数料を減らして掛けるという違いがあります。
外掛けの20%は、内掛けの25%に等しいため、「手数料は20%です」と言われても、実は内掛けで計算すると25%だったということは、ケースとして非常に多いです。
そのため、手数料を説明される際は、必ず内掛け・外掛けの確認をするようにしましょう。
最低契約期間と最低出稿金額はどれくらいか
多くのBtoBサービスでは、最低契約期間や最低出稿金額が設定されている場合があります。
最低契約期間が3か月~6か月などの制約があることが多く、途中解約が難しいケースもあります。
リスティング広告に初めて挑戦するというケースにおいては、長期間の契約はリスクになります。
特にあまり予算が潤沢にない場合は、出稿金額や契約期間の条件が柔軟な代理店を選ぶことが大切です。
アカウントのアクセス権限はもらえるのか
リスティング広告の運用において、アカウントのアクセス権限を持つことは非常に重要です。
運用を代理店に完全に任せる場合でも、広告アカウントのデータにアクセスできるかどうかを確認しましょう。
アクセス権限があれば、代理店の運用状況をいつでもチェックでき、不透明な運用を避けることができます。
100万円の予算で発注していたのに、実態は30万円しか使っておらず、まるまる手数料として取られていたなんてことも稀にあります。
代理店のレポートだけを信じずに、知識がなくても積極的にアカウントにアクセスして、レポートどおりの数値になっているかを確認するようにしましょう。
アカウントの所有権はどちらに帰属するのか
広告運用のアカウントの所有権が代理店に帰属していると、代理店を変更する際に問題が生じることがあります。
たとえば、契約終了後にアカウントを引き継げない場合、これまでの運用データを失い、ゼロから再スタートしなければならない可能性があります。
リスティング広告には学習という概念があり、新しいアカウントやキャンペーンを作成した場合など、最初の2週間~1ヶ月は成果が悪くなる傾向にあります。
アカウントの所有権がどちらにあるのかは、契約前にしっかり確認し、所有権が自社に帰属することを明確にしておくことが理想です。
これにより、代理店変更時にもスムーズに運用を引き継ぐことができます。
どのようなレポートを提供してもらえるのか
リスティング広告の運用では、定期的なレポートによる効果測定が重要です。
代理店がどのような内容のレポートを提供してくれるのかを確認し、透明性のある運用が行われているかどうかを判断しましょう。
最低限、以下の要素をおさえておくと良いでしょう。
- 日次・月次レポートの提供:運用結果の詳細なデータを定期的に提供してもらえるか
- 改善提案:運用データに基づいた改善策の提案があるかどうか
- 広告運用のKPI:目標としているKPIに対する達成度がしっかりと記載されているか
まとめ
リスティング広告代理店を選ぶ際、大手だからといって必ずしも安心というわけではありません。
大手代理店には豊富なリソースや業界全体の知識がある反面、担当者が必ずしもベテランとは限らず、手厚いサポートが受けられない場合もあります。
一方で、小規模な代理店は柔軟な対応とコストパフォーマンスの良さが魅力ですが、特定業界・業種のノウハウがなかったり、技術的なサポートが不足していることがあります。
選ぶ際には、代理店の規模だけでなく、自社にとってどのようなサポートが必要かを考えることが大切です。
また今回紹介した内容を踏まえて、代理店がどこまで説明をしてくれるかにも注目してみましょう。
特に初めての代理店選定の場合、分からないことが多く不安だと思います。
そんな方にも真摯に向き合ってくれ、誠実に対応してくれるような担当者であれば、例え成果が上がっていなくても、それに対する改善提案などを積極的に提示てくれるのはないでしょうか。
最後に、全く無知のまま代理店に委託することは非常に危険です。
ぜひ最低限のデジタルマーケティングに関する知識をつけた上で、代理店への委託を検討するようにしましょう。